僕は、虫が大好きな子供だった。
(パンダ談)
あのね、聞いて。
思い出話なんだけど。

ねえ、ママ。
これあげる
幼い僕の手には、空になったばかりのまだ新しさを感じるインスタントコーヒーの瓶。
中には、僕が家の周りの石という石をひっくり返して集めた「宝物」が、瓶の肩までぎっしりと詰まっていた。
当時の僕にとって、最初の相棒はカブトムシでもクワガタでもなく、石の下に潜む「ダンゴムシ」だった。
触れるとコロンと丸まるその姿が魔法のようで。
夢中になって集めるうちに、真っ黒な粒で瓶はいっぱいになった。

あら、新しいのをわざわざ持ってきてくれたの?
パンダくん、ありがとう。
母はいつものように優しく微笑んで、それを受け取った。
母は虫がこの世で二番と言っていいほど苦手だ。
(一番は別にある)
でも、幼い僕の「好き」を否定したことは一度もなかった。
何より、僕が差し出したその瓶を、母は本物の封を開けたばかりの芳醇なインスタントコーヒーだと信じて疑わなかった。
事件が起きたのは、その直後だ。
母は鼻歌まじりにスプーンを差し込み、山盛りの一杯をすくい上げた。
スプーンの上で、真っ黒な「コーヒーの粒」たちが、もぞりと動いて完全な球体になった。

……ギャーーーッ!!
家中に響き渡る絶叫。
放り出されるスプーン。
そして、まだ新しい瓶からリビングの床へと一斉に転がり出していく、数え切れないほどの「相棒」たち。
パニックで腰を抜かす母と、それを誇らしげに見つめる無邪気な僕。
今思い出しても、これ以上ないほど残酷で、これ以上なく笑えるテロ行為だったと思う。
普通なら「もう二度と虫なんて持ってこないで!」と禁止されてもおかしくない事件だ。
でも、母はその後も僕を叱ることはなかったし、僕の「虫愛」を止めることもなかった。
なぜ、あんなに虫が嫌いだった母は、僕の好奇心を奪わなかったのか。
大人になってから、僕はその理由を母に尋ねたことがある。
そこで返ってきたのは、僕のこれまでの人生の根っこを支えるような、あまりにも意外で、温かい「祈り」のような言葉だった。
(ここから先は白パンダプラン以上限定のディープな話です)



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