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「お洋服を汚すのが、僕のお仕事」——泥だらけの僕を全肯定した母の魔法

わず
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僕は、僕の仕事をするだけで許されていた。
(パンダ談)

あのね、聞いて。
思い出話なんだけど。

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これが僕のお仕事だから

今から40年ほど前。
僕の「メインオフィス」は、近所の空き地や道端の植え込みにありました。
当時の僕のミッションは、アリの行列がどこへ続くのかを突き止めること。
地面に這いつくばり、服の汚れなんて1ミリも気にせず、ただただ小さな命の行方を追う毎日。

そんなある日のこと。
通りかかった近所のおばさんが、泥だらけで地面に寝そべる僕を見て、血相を変えて飛んできました。

あらら、パンダくん!
そんなところで寝っ転がって!
お洋服がドロドロじゃない。
ママにこっぴどく怒られちゃうわよ!

おばさんの目には、洗濯という重労働を押し付けられる「被害者」の母と、それを困らせる「加害者」の僕に見えたのでしょう。
しかし、当時の僕は、顔を上げて自信満々にこう言い放ったのです。

パンダ
パンダ

いいんだもーん。
お洋服を汚すのは僕のお仕事なの。
汚れたら、ママが喜んでお洗濯してくれるんだよ!

おばさんは、開いた口が塞がらなかったといいます。
無理もありません。
端から見れば、とんでもなく傲慢でわがままな子供の言い草です。
でも、僕がこれほどまでに堂々と「泥だらけの自分」を肯定できたのには、理由がありました。

母がいつも、外へ遊びに行く僕にこう言っていたからです。

母

いい?パンダくん。
お洋服を汚してくるのは、パンダくんの大事なお仕事。
それを綺麗にお洗濯するのは、ママの大事なお仕事。
だから、今日も張り切ってお仕事して(遊んで)おいで!

母は、僕の好奇心に「洗濯の手間」という現実的な問題でブレーキをかけてしまうことを何より嫌いました。
たとえ服が真っ黒になっても、それは僕が世界に触れ、何かを学んだ「証拠」なのだと全肯定してくれたのです。

……と、ここまでは僕の記憶にある「微笑ましい思い出話」です。
でも、大人になり、自分でお洗濯をするようになってから、僕はふと気づいたのです。
あの「魔法の言葉」の裏側にあった、母の本当の凄さに。

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夜の洗面所に響いていた、ジャブジャブという音

40年前の洗濯は、今のようにボタン一つで乾燥まで終わるようなスマートなものではありませんでした。

我が家の洗濯機は、洗いと脱水が分かれた「二槽式」。
重たくなった洗濯物を手で移し替え、脱水槽のバランスを整え……。
そんな手間が当たり前だった時代です。
ましてや、僕がつけてきた頑固な泥汚れは、いきなり洗濯機に入れたところで落ちるはずもありません。

僕が泥だらけの冒険を終え、温かい布団でぐっすりと眠りについていた頃。
母は一人、静まり返った洗面所に立っていました。

まずは大きな洗面器に水を張り、泥だらけの服を漬け置く。
そこから固形石鹸を使い、自分の手で汚れを丁寧に揉み出していく。
冬場は凍えるような冷たい水に手を浸しながら、ジャブジャブと。
何度も、何度も。

そうして、洗濯機に入れる前の「下洗い」という名の重労働を終えてから、ようやくガタガタと音を立てる二槽式洗濯機を回していたのです。

それだけの苦労を毎日、何年もこなしていたというのに。
不思議なことに、僕の記憶にある母の手は、いつも白くてきれいなままでした。
あかぎれ一つないその手は、きっと僕の好奇心をまるごと受け止めるために、人一倍強かったのでしょう。

母は、僕に「申し訳ない」と思わせたくなかったのだと思います。
僕の好奇心に「親に迷惑をかけている」という罪悪感を持たせたくなかった。
ただ純粋に、息子が世界を広げていく姿を、一番近くで応援したかった。

そのために母は、夜の洗面所で、凛とした強さをもって自分の時間を捧げてくれていたのです。

今の僕が、病気や困難があっても「ブログ」という新しい世界に飛び込み、自分を表現できているのは、間違いなく、あの時母が泥と一緒に僕の「不安」を洗い流し続けてくれたおかげです。

お母さん、あの時はたくさんのお仕事をさせてごめんね。
そして、最高の環境を整えてくれて、本当にありがとう。

今度は僕が、その強くてきれいな手に、最高のプレゼントを贈る番だと思っています。

聞いてくれてありがとう。

   

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