世界と机上を比較した。
(パンダ談)
あのね、聞いて。
思い出話なんだけど。
今日は、僕がまだ「ももぐみ」さんだった頃の話をしようと思う。
僕の今の「調べること」や「記録すること」の原点が、そこにあるような気がするんだ。
図鑑が友達だった頃
僕は子供の頃、とにかく図鑑や学研の「まんがでよくわかるシリーズ」を読み耽るのが大好きな子供だった。
ページをめくるたびに広がる未知の世界。
そこに載っている生き物たちは、僕にとって半分は「空想の産物」のような、遠い存在だったんだ。
僕が通っていた幼稚園には「ももぐみ」という年少さんクラスと、「さくらぐみ」という年長さんクラスがあった。
幼稚園に向かうバスを降りてから、園舎へと続く長い坂道。
そこは僕たち園児にとって、毎日ちょっとした冒険の舞台だった。
坂道の「キーボー」との遭遇
ある日、坂道を歩いていると、年長さんの「さくらぐみ」の先輩たちが一箇所に集まって、何かを指さして叫んでいたんだ。
「あ!キーボーがいた!」
「キーボーだ!すげぇ!」
キーボー?
僕が首を傾げていると、先輩たちの視線の先に、スッと細長くて、鮮やかな緑色をした「何か」が動いていた。
僕は息を呑んだ。
知っている。
図鑑で何度も見たことがある。
でも、僕の家の周りには一度も現れたことがなかった、あいつだ。
「……ナナフシだ」
本物の、生きている緑色のナナフシ。
図鑑の平らな紙の上じゃなく、立体として、僕の目の前でゆっくりと長い足を動かしている。
その瞬間、僕の心臓はドクンと跳ねた。
「本当にいたんだ!」という興奮を抑えきれなくて、僕は幼稚園から帰るとすぐに自分の部屋へ走った。
重たい図鑑を引っ張り出して、ページをめくる。
「ナナフシ」の項目を見つけて、今日見たばかりの真新しい記憶の緑色の体と、図鑑の写真を食い入るように見比べた。
「やっぱり、本物だったんだ……」
あの時、図鑑と現実がリンクした快感は、今でも鮮明に覚えている。
でも、今の僕があの坂道に戻って、あの緑色の長い体に出会ったら、どう思うだろう。



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