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高級な車えびを胃液のプールで泳がせた日の記憶

わず
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今は食べられるよ。
(パンダ談)

あのね、聞いて。
思い出話なんだけど。

もうすぐピカピカの一年生になるます!
期待に胸をふくらませて、心臓がポップコーンみたいに弾けそうだったあの頃。
幼稚園の先生から

パンダくん、嫌いな食べ物はある?

と聞かれたことがありました。

僕は少しだけ考えるます。
きっとピーマンやニンジンといった、子供界のヒエラルキーで最底辺に位置する野菜たちの名前を挙げるのが正解だったのでしょう。
でも僕の脳裏に浮かんだのはもっと生々しくて、もっと高級な記憶の残骸だったのです。

パンダ
パンダ

車えびです。

僕はそう答えました。

実は僕の親戚には海の男、つまり漁師さんがいて。
ある日豪華な夕食に招かれたことがあったのです。
テーブルの上には、これでもかというほど大量の車えびが整列していました。
ついさっきまで海でバリバリ働いていたであろう彼らはその固い殻を脱がされてもなおピチピチと跳ね、命の輝きを放っていました。

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僕はその躍り食いや、贅沢すぎるしゃぶしゃぶに夢中になるました。
子供の胃袋のキャパシティを完全に無視して、高級な命を次々と自分の中に収監していったのです。
しかし、強欲のツケはすぐに回ってきました。
その夜僕は、食べたものすべてをマーライオンのような勢いでリバースしてしまったのです。

キラキラした車えびの記憶が、一瞬にしてなんか変に甘い味がねっとりと口に残る惨劇へと塗り替えられました。
それ以来、僕は車えびを見るだけであの夜の変にねっとりとした甘さの味を思いだして、全身がブルーチーズのような色になってしまうようになったのです。

先生は僕の答えを聞いて、少しだけ肩を震わせて笑いました。

車えびは給食に出ないから大丈夫だね。

その優しさは、どこか「この子はへんてこりんな家庭で育っているのかもしれない」という憐れみに似ていたような気がします。
ちなみに、親友のくんちゃんは

くんちゃん
くんちゃん

松茸が食べられない!

と答えたそうです。

先生は「この二人は面白いわね」と、僕たちの親に笑って話したといいます。

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大人は、子供が贅沢品を拒む姿を「微笑ましいエピソード」として消費します。
でも僕たちが抱えていたのは純粋なトラウマであって、決して選民意識からくる偏食ではありませんでした。
結局のところ僕たちの「吐瀉物の記憶」すらも、大人にとっては格好の酒の肴にされてしまうのです。
自分がいいことをしたと信じて疑わない大人の笑顔ほど、暴力的なものはありません。
僕も将来、他人の不幸を綺麗にラッピングして笑い飛ばす立派な大人になるます。

ねえ、あなたも吐き出したドロドロしたものを、誰かに「ねぇ、聞いて」って綺麗にラッピングされて無理やり飲み込まされたことあるでしょ?

ちなみに、えびの仲間には「テッポウエビ」という、ハサミをパチンと鳴らすだけで衝撃波を発生させて獲物を気絶させる恐ろしいやつがいるますぱん。
その衝撃波の温度は、一瞬だけ太陽の表面温度と同じくらい(約4,400度以上)にまで達すると言われてるんだぱん。

小さなハサミの中に太陽を飼ってるなんて、自然界はとっても物騒で加減を知らない残酷な場所だぱん。
弱い者は衝撃波で焼かれるか、僕みたいに食べすぎて吐かれるか。
どちらにせよろくな終わり方をしないんだぱん。

雨上がりのアスファルトから、生温い埃の匂いがしている。

しらんけど。


胃液にまみれた車えびの殻を、素手で拾い集めるような背徳感を抱え込んで。
飼育員さんの部屋へ、こっそりお入りください。

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