味の違いはわからんけれど幸福度は高い。
(パンダ談)
あのね、聞いて。
飲食の話なんだけど。
スーパーの練り物コーナーで、僕は「のどぐろを使ったお魚ソーセージ」という、なんだか背伸びをした食べ物を見つけてしまったます。
のどぐろ。
その響きだけで、お口の中が急に高級料亭の玄関先みたいな匂いになります。

パッケージの帯に書かれた文字の向きに合わせて写真を撮ろうとしたら、本体のソーセージたちが全員で逆立ちを始めてしまいました。
まるで統率の取れていない新入社員の集合写真です。
どうなってんだ、責任者はどこだ!
僕は心の中で、存在しないカスタマーセンターに優しく抗議するます。
このソーセージ、山陰産のどぐろを使っているうえに、カルシウムが強化されているます。
骨を強くして、何と戦わせるつもりなんでしょうか。
僕は別に、自分の骨格をサイボーグ化したいわけではないのです。
含有量を調べたら、牛乳2人分くらいでした。
平日ならまぁ、僕の繊細な体調もびっくりしないかもしれません。
だけど週末は危険が危ないかもしれません。

実は僕はお医者さんから出されたカルタンというお薬を飲んでいるので、カルシウムの過剰摂取には人一倍あせるます。
でも、筋肉のためのたんぱく質はもっともっと欲しい。
骨を取りすぎたくない僕と、筋肉をつけたい僕。
この板挟み感は、上司の顔色を伺いながら部下の不満を聞き流す哀愁漂う中間管理職そのものです。
のどぐろという魚は、のどは真っ黒なのに身は透き通るように白い。
まるで腹黒い本心を抱えながら、営業スマイルで「善処します」と答える僕たちの鏡のようです。

実際に食べてみたら、味は普通のお魚ソーセージと大差なくて。
期待したほど「のどぐろ感」は暴れてくれませんでした。
でも、いいんです。
大事なのは「のどぐろを食べている」という選民意識に浸る、その一瞬の精神的ドーピングなのですから。
こうして薄っぺらな優越感で自分をなだめることで、今日もなんとか平穏を保っているます。
結局自分の心が満たされるなら、中身が偽物だろうが本物だろうが、どっちでも幸せなんですかね。
ちなみに、のどぐろ(アカムツ)の口の中が黒いのは、喉に潜む寄生虫や食べた獲物を目立たせないためだと言われているぱん。
深海に住む魚の中には、獲物の発光を外に漏らさないように内臓を黒くコーティングしている種類もいるんだぱん。
食べたものを光ごと闇に葬るなんて、証拠隠滅のプロだぱん。
隠し通せばそれは「無かったこと」になる。
この世界の美しさは、そうやって誰かのどす黒い隠蔽工作の上に成り立っているんだぱん。
こんな僕を「浅ましい」と笑うあなただって、その心の喉を覗けば。
僕と同じくらい真っ黒なシミがべったりと張り付いているかもしれません。
ねえ、僕たちのこの黒さ、一緒にソーセージの皮に包んで飲み込んでしまいましょうよ。
換気扇が、油の切れた音で低く鳴っている。
しらんけど。
のどの奥に隠した黒いシミを、あなたならどうやって消しますか。
このソーセージの余ったフィルムの捨て方について、お話ししましょうか。



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